【ボルネオゾウの弾痕】2007.3.12
私(山遊舎代表 稲田 信廣)は、15年前より、ボルネオ(マレーシア・サバ州)の
自然と先住民族文化の虜になりました。
現在までに、約150回訪問しています。
一番の目的は、アジアゾウの仲間であり、最も体のサイズが小さいと言われている
希少種「ボルネオゾウ」の観察と撮影です。
主な観察地域はキナバタンガン下流域のアバイ村から、バトゥプティ村間の
約150km流域です。
15年前に初めて出会った子ゾウ達も大きく成長しましたが、約3年前より、ゾウの
ファミリーに大きな変化が表れています。
まず、個体数の減少。約110頭いたファミリーが2007年2月には約70~80頭に
減少しています。
何故、個体数が減少しているのか?
昨年、秋からの観察で明らかになったのは、明らかに銃で撃たれた弾痕がゾウの身体に見つかったことです。
写真でもハッキリ表れています。
誰がこんな事をするのでしょうか?
先住民族の方々は、昔からゾウを「森のお父さん」と呼んで敬っています。
推測ですが、考えられるのはアブラヤシのプランテーション(農園)に進入したゾウを
プランテーションの従業員が、追い払うために銃撃しているらしいとの情報を得ました。
銃撃だけではなく、頭から油を浴びせられて、片目を失明したゾウもいます。
写真の母子ゾウのお母さんも横腹に弾痕があります。
成獣では即死しませんが、徐々に身体に鉛が溶け出し、弱りながら死を迎える可能性があります。
母ゾウが亡くなれば、5才まで授乳を受ける子ゾウの運命も終わってしまいます。
(子ゾウは昨年8月生まれの6ヶ月です)
少なく取り残されたジャングルが、今なお、農園に開発されています。
マレーシアの経済発展には無くてはならないアブラヤシですが、このままでは熱帯雨林
の希少な野生動物達が、全滅するのも時間の問題です。
皆さん、マレーシアで生産されるヤシアブラの90%が日本に輸出されている事をご存知
でしょうか?
次回では、もう少し詳しくお伝えしましょう。